齋藤班員の論文がGenes Devに掲載されました
2013.08.14
齋藤先生のグループではこれまでにOSCというpiRNAを発現しているDrosophilaの体細胞株を使ってpiRNA制御機構の研究を進めてこられました (Nature 2009; 461: 1296)。
今回の論文は、この細胞を使い、DmGTSF1というPiwi-piRNA複合体がトランスポゾンを抑制するのに必要な新たな制御因子を同定したという報告です。DrosophilaのpiRNA制御機構の分子メカニズムの全貌は明らかになっていませんが、齋藤先生はgametocyte-specific factor 1 (GTSF1)というマウスの遺伝子ノックアウトマウスの表現型に着目しました。このマウスではMiliやMiwi2のノックアウトマウスと同様に雄性不妊となり、DNAメチル化とトランスポゾンサイレンシングの異常が見られます。齋藤先生はこの遺伝子のDrosophila ホモログ4遺伝子をOSCにおいてノックダウンしたところ、そのうちの一つであるCG3893 (DmGTSF1と命名)のノックダウンではトランスポゾンの抑制が外れることを見いだしました。オスが不妊になるマウスの場合と異なり、この遺伝子の欠損はfollicle細胞がなくなってしまいメスにおいて不妊になってしまいます。この分子の作用機序を調べたところ、興味深いことにDmGTSF1は核にあるPiwiと直接相互作用していることが分かりました。このことから齋藤先生は、DmGTSF1がpiRNAをのせたPiwiの核内パートナー分子として働くことを提唱されています。これまで、Piwiの核内パートナー分子については不明であり、この発見によって、トランスポゾン抑制のメカニズムが明らかになることが期待されます。
今回の齋藤先生の論文とほぼ同じ内容が同じ号のGenes Devにも報告されており、piRNAの業界は大変な競争ですが、Piwiがどのように標的遺伝子を抑制するのかを考える上で、新たな制御因子を明らかにした重要な仕事だと思います。
(篠原)
(Genes Dev. 2013 Aug 1;27(15):1656-61.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23913921