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 計画研究班(H25~H29) 

相賀 裕美子
国立遺伝学研究所 教授

【計画研究A01】RNA制御を介した生殖細胞の性特異的エピゲノムの確立

マウス初期胚で形成された始原生殖細胞は精子・卵子のどちらにも分化する能力をもつが、体細胞で構成される生殖巣の環境下で性決定をうける。我々は、生殖細胞性分化の確立に関わるシグナル系を同定し、性決定の分子機構を解明する。また生殖細胞の雄性分化に必須なRNA制御機構に着目し、RNA制御と生殖細胞のエピゲノム確立の関係を明らかにする。

篠原 隆司
京都大学 医学(系)研究科(研究院) 教授

【計画研究A01】精子幹細胞のエピゲノム安定性と発がんとの関係の解析

生殖細胞は次世代に遺伝子を伝達するのみならず、奇形腫へ変化することにより様々な種類の体細胞へと分化するユニークな能力を持っている。しかしながら、その体細胞への発生能力を抑制している分子機構は未解明である。本研究では、1)どのように生殖細胞が体細胞への発生能力を抑制しつつ未分化性を維持するのか、2)リプログラミングとがんの違いはどこにあるのかを明らかにしたい。更にその知識に基づき、3) GS細胞のリプログラミングの人為操作を目指す。

中馬 新一郎
京都大学再生医科学研究所 准教授

【計画研究A01】生殖幹細胞の減数分裂移行を制御するゲノム-エピゲノムプログラム

生殖系列サイクルは遺伝情報を体細胞よりも厳密に継承する一方、減数分裂期には逆にゲノムを積極的に再編し次世代の多様性を生むメカニズムが働く。本研究では生殖幹細胞の増殖分化転換とゲノム-エピゲノム制御の連携を明らかにする為、質量分析、次世代シークエンス等を組み合わせたマルチオミクス研究と個別の分子生化学、遺伝学的解析を進め、特に核動態とシグナル伝達のクロストーク解明を目標とする。また遺伝情報の継承と再編の分子基盤の理解を通じてその制御技術の開発を目指す。

齋藤 都暁
慶應義塾大学医学部 准教授

【計画研究A02】小分子RNAが誘導するエピゲノム形成の分子機構

生殖細胞ではレトロトランスポゾンの発現がpiRNAと呼ばれる小分子RNAによって抑制されている。piRNAは、核内蛋白質Piwiと複合体を形成し、抑制されるレトロトランスポゾンの配列情報(ガイド分子)として機能する。本研究はショウジョウバエ卵巣由来培養細胞OSCを用いて、(a) piRNAによって誘導されるエピジェネティックマークとその分子機構、(b) piRNA-Piwi蛋白質群複合体の作用機構、を生化学的に解明する。以上の解析結果を基に、「小分子RNAによるエピゲノム操作技術」の確立を目指す。

中村 肇伸
長浜バイオ大学バイオサイエンス学部 講師

【計画研究A02】着床前胚のエピゲノムダイナミクスと制御

初期の着床前胚は、胎仔、胎盤のどちらにも分化する「全能性」と呼ばれる能力を有するが、自己複製能を持つ幹細胞ではないためにその利用は限定されている。我々は、全能性細胞で特異的に発現する遺伝子の機能解析を通じて、精子と卵子が全能性を獲得する分子機構を明らかにすることを目的としている。また、研究成果に立脚した"全能性幹細胞"の樹立を目指す。

伊川 正人
大阪大学微生物病研究所感染動物実験施設 教授

【計画研究A02】受精を介した経世代エピゲノム変化の解明と制御

本課題では、受精とエピゲノム変化を、a) 精子成熟、b) 受精、c) 卵子活性化、d) 父性エピゲノムの異常が及ぼす個体発生への影響、の4ステージに分けて調べ、生殖細胞のエピゲノム世代サイクルにおける受精の役割を解き明かす。またTALE(N)やCRISPRシステムを用いてマウスゲノムを塩基レベルで操作するゲノム編集技術を開発するとともに、本研究領域の遺伝子改変マウス作製拠点としての支援を行う。

束田 裕一
九州大学 生体防御医学研究所 准教授

【計画研究A02】卵および初期胚のエピゲノム制御機構

全能性 (totipotency) とは、1つの細胞が自律的に個体を形成できる能力あり、このような能力を持つ全能性細胞は、哺乳類では受精卵と一部の初期胚である。本研究では、卵と初期胚のエピゲノム制御機構を解析することで、全能性細胞の分子基盤を明らかにしたい。

小倉 淳郎
理化学研究所バイオリソースセンター 室長

【計画研究A03】核移植技術を用いた生殖サイクルのエピジェネティクス変化の解析

哺乳類のゲノムでは、着床時や生殖細胞分化中に特有の長期的エピジェネティクス記憶が成立する。これらのエピジェネティクス修飾の多くは核移植後も維持されることから、核移植クローン胚・胎仔・胎盤を解析することにより、そのエピジェネティクス記憶の詳細を明らかにできる。本研究では、核移植技術と最新ゲノム解析技術を組み合わせ、哺乳類の生殖サイクルにおいて重要な機転となるエピジェネティクス変化の機構とその生物学的意義を明らかにする。また、領域内研究者のために、核移植や顕微授精など特殊胚作成の支援を行う。

佐々木 裕之
九州大学生体防御医学研究所 教授

【計画研究A03】ゲノムインプリンティングとDNAメチル化のダイナミクスと制御

本研究では哺乳類の発生に重要なゲノムインプリンティングをモデル系として、配偶子形成におけるエピジェネティック修飾確立機構と受精後の維持伝達機構を明らかにする。そのため、微量なサンプルにエピゲノム解析技術を適用して生殖細胞や初期胚におけるエピゲノムのダイナミックな変動を捉え、遺伝子ノックアウトや生化学的解析によりそのメカニズムを探る。また、本研究領域のエピゲノム解析拠点として他メンバーのエピゲノム解析の支援を行なう。

 公募研究班(H26~H27) (クリックで表示/非表示)

鈴木 仁美
東京医科歯科大学医歯学総合研究科 テニュアトラック助教

【公募研究A01】女性の生殖可能期間を支える原始卵胞活性化制御機構とエピゲノム修飾

健康なヒト女性は約40年という長い生殖可能期間を維持する。これは未成熟で休眠状態にある卵母細胞を含む「原始卵胞」の維持と活性化のバランスを保つ機構、即ち原始卵胞活性化(PFA)制御機構が働いているからである。本研究では、PFA制御機構においてエピゲノム修飾が果たす役割を探るとともに、その分子メカニズムの全容を明らかにしたい。

立花 誠
徳島大学疾患酵素学研究センター 教授

【公募研究A01】H3K9脱メチル化エピゲノムによる生殖細胞の機能制御

発生・分化段階特異的な遺伝子が時間的・空間的に正しく発現するためには、クロマチンの構造変換によるエピジェネティック制御系が重要な役割を果たしている。本申請課題では、H3K9のメチル化エピゲノムが生殖細胞の分化・機能に果たす役割、およびその時空間ダイナミクスを理解することを目的とし、生殖細胞におけるH3K9脱メチル化酵素の役割を明らかにする。

宮川 さとみ
大阪大学医学系研究科 特任講師

【公募研究A01】piRNAを介したエピゲノム操作法の開発とその利用

生殖細胞特異的な非コード小分子RNAであるpiRNA(PIWI interacting RNA)はde novo DNAメチル化を介する遺伝子発現のサイレンシングに関与する。本研究では、EGFP遺伝子のセンス鎖とアンチセンス鎖を発現するトランスジェニックマウスを用いたモデル系を構築し、piRNAによる遺伝子サイレンシングのメカニズムを詳細に解析していく。また、この方法論を内在性の遺伝子に応用し、piRNA経路依存的にサイレンシングする、エピゲノム操作システムの確立を目指す。

奥田 晶彦
埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 教授

【公募研究A01】Max遺伝子発現コントロールによる生殖細胞発生プログラム誘導の分子メカニズム

始原生殖細胞(PGCs)は、Oct3/4、UTF1など、代表的なES細胞マーカー遺伝子の多くを発現している。しかし、ES細胞が自然発生的にPGC細胞へと変換するといった現象は観察されたことはない。このことは、ES細胞にはPGC細胞等の生殖系の細胞への変換を抑制する確固たる分子基盤が存在することを示唆している。本公募研究では、ES細胞においてMax遺伝子をホモ欠失させると減数分裂関連遺伝子の発現上昇が見られるという現象を軸として、ES細胞が、いかなる分子メカニズムでもって生殖系の細胞への自然発生的な変換を阻止しているかを明らかにすることを目指す。

山中 総一郎
慶應義塾大学医学部 助教

【公募研究A01】GS細胞を用いた雄性エピゲノム形成の分子基盤の解明と新規解析技術の開発

受精卵が分化する過程でエピゲノムはダイナミックに変化する。配列特異性を持たないクロマチン修飾酵素は、時空間的にプログラムされたエピゲノム変化をいかにして可能にしているのだろうか。RNAがクロマチン修飾酵素のガイド分子であることが近年少しずつ明らかとなってきたが、その過程には未知の部分が多い。本研究では、この「RNAとエピゲノムのインターフェイス」に着目してその分子実態を生化学的に明らかにする。

関 由行
関西学院大学理工学部・生命科学科 准教授

【公募研究A01】始原生殖細胞によるエピゲノムリプログラミング

生殖細胞の起源である始原生殖細胞では、大規模なエピゲノム再編成(エピゲノムリプログラミング)が誘導される。本研究では、CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術とES細胞から始原生殖細胞への分化誘導系を用いて、エピゲノムリプログラミングを制御する分子基盤を解明する。また、同定した分子基盤の人為的制御による新規細胞リプログラミング法の開発も目指す。

阿部 訓也
理化学研究所バイオリソースセンター チームリーダー

【公募研究A01】発生転換点におけるエピゲノム形成とヒト-マウス始原生殖細胞の比較エピゲノム解析

これまでに、初期胚に存在する多能性細胞から、始原生殖細胞 (PGC)、配偶子へと至る一連の細胞系譜において劇的に遺伝子発現・エピゲノムが変動する 「変曲点」の探索を行ってきた。本研究では、これらの変曲点における時空間的エピゲノムダイナミクスとその意義を追求することを目的とし、1)着床前後のマウス胚における遺伝子発現と、DNA メチル化データを統合し、胚発生の基盤となる 「青写真」としての DNA メチル化への理解を深める、2)ヒト胚より PGC を単離し、 マウスの知見と比較解析することにより、哺乳類生殖細胞に共通のエピゲノム基盤の探索を行う、 などの研究を計画している。

岡江 寛明
東北大学医学系研究科 助教

【公募研究A02】ヒト生殖細胞のエピゲノムダイナミクスとその制御機構

DNAメチル化は生殖細胞および初期胚において極めてダイナミックに制御され、核の初期化やゲノムインプリンティングなどに重要な役割を果たす。本研究では、ヒト配偶子および胚盤胞のDNAメチル化状態を一塩基解像度で決定し、ヒト初期発生過程におけるメチロームダイナミクスを明らかにする。

谷本 啓司
筑波大学生命環境系 教授

【公募研究A02】マウス・ゲノム刷り込み制御配列のエピゲノムダイナミクス

生殖細胞の形成から受精、初期胚発生に至る過程は、細胞のエピゲノムや遺伝子発現プロファイルが、比較的短期間に、ダイナミックに変化する。世代を超える生物現象であるゲノム刷り込みも、まさにこの時期のエピゲノム制御の理解が重要である。本研究では、我々がトランスジェニック・マウスにより見いだした「受精後に起こる刷り込みDNAメチル化現象」の解析を通して、ゲノム刷り込みの本質に迫りたい。

廣田 泰
東京大学医学部 助教

【公募研究A02】子宮-胚間の協調的なエピゲノム調節と胚の活性化

受精卵は着床直前に子宮内に移入し、子宮の作用によって活性化され、子宮への接着反応を開始する。着床により胚の細胞分化が加速し、胚のDNAメチル化は着床の前後でダイナミックに促進されるが、その詳細は明らかでない。本研究では、子宮による着床に向けた初期胚活性化の分化調節機構の解明を目指す。

青木 不学
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

【公募研究A02】母性mRNAの分解に着目したゲノムリプログラミングの調節機構の解明

受精前の卵は分化した細胞であるが、受精後の1細胞期胚は全能性を獲得し、あらゆる種類の細胞へと分化できる能力を有するようになる。この受精前後における分化・全能性の変化を調節する機構には、クロマチン構造のダイナミックな変化によるゲノムのリプログラミングが関与していると考えられているが、その調節機構についてはこれまでほとんど明らかにされていない。一方、申請者のこれまでの研究結果において、体細胞などで普遍的に存在するヒストン修飾やヒストンの変異体が受精直後にクロマチンから消失することが明らかとなった。そこで、本研究では様々なエピジェネティクな因子の消失がリプログラミングの調節に関わっているとの仮説を立て、その検証を試みる。

遠藤 充浩
理化学研究所統合生命医科学研究センター 研究員

【公募研究A02】非典型的ポリコーム群MBLR複合体による減数分裂遺伝子のエピジェネティック制御

減数分裂は生殖細胞にのみ起こる分裂様式であり、減数分裂に関連する遺伝子は特有の発現制御を受けると予想されるが、その分子機構はまだ良く分かっていない。本研究では、非典型的ポリコーム群MBLR複合体の機能発現機序に注目した解析を通して、クロマチン制御因子と転写因子のクロストークによる減数分裂関連遺伝子のエピジェネティック制御機構とその生物学的意義の解明を目指す。

永瀬 浩喜
千葉県がんセンター研究所がん遺伝創薬研究室 研究所長

【公募研究A03】ゲノム認識エピジェネティック変更化合物の開発

ゲノム配列特異的に薬剤を送達する技術によりHDACインヒビターをゲノムの一定領域に送達させることに成功した。この技術を利用し、特定のゲノム領域のヒストンアセチル化を変更することで、生殖細胞のエピゲノムの乱れの機能解析やエピゲノム操作によりエピゲノムの乱れを正常化する治療薬剤候補の開発に研究を進めていきたい。

 公募研究班(H28~H29) 

石津 大嗣
東京大学大学院理学系研究科 助教

【公募研究A01】piRNA生合成経路による翻訳制御機構

生殖細胞特異的に発現するpiRNAは、転移因子の発現抑制に関与する機能性小分子RNAである。piRNAの大半は転移因子に由来する配列を持つが、ある特定のタンパク質コード遺伝子の3′非翻訳領域からもpiRNAが作られることが知られている。これらはgenic piRNAと呼ばれるが、その標的遺伝子は未知なものが多く、どのような生理的役割を担っているのか不明である。本研究では、ショウジョウバエをモデルとした解析からエピゲノム制御因子としてのgenic piRNAの機能を明らかにしたい。

栗本 一基
京都大学大学院医学研究科 准教授

【公募研究A01】生殖細胞のエピゲノムリプログラミング過程における多能性転写因子群の制御基盤の解明

始原生殖細胞は、多能性の基盤転写因子群を発現し、潜在的に多能性を再獲得・保持する。一方、始原生殖細胞はエピゲノムリプログラミングによって、ゲノムの構成的情報を一旦初期化し、次世代個体の全発生に備えると考えられている。最近の研究から、リプログラミング過程にある生殖細胞のエピゲノムが、ナイーブな多能性とは相当に異なることが明らかになり、生殖細胞の潜在的多能性の転写制御基盤も、多能性幹細胞とは異なることが示唆された。また、顕在化した多能性は奇形種の原因となるなど生体の脅威となりうる。本研究では、研究代表者らが開発した、少数細胞における転写因子に対するChIP-seq法を用いて、エピゲノムリプログラミング過程にある生殖細胞における多能性転写因子群のゲノム結合部位を同定し、その核内基盤の解明を目指す。

立花 誠
徳島大学先端酵素学研究所 教授

【公募研究A01】H3K9脱メチル化エピゲノムによる生殖細胞の機能制御

発生・分化段階特異的な遺伝子が時間的・空間的に正しく発現するためには、クロマチンの構造変換によるエピジェネティック制御系が重要な役割を果たしている。本申請課題では、H3K9のメチル化エピゲノムが生殖細胞の分化・機能に果たす役割、およびその時空間ダイナミクスを理解することを目的とし、生殖細胞におけるH3K9脱メチル化酵素の役割を明らかにする。

奥田 晶彦
埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 教授

【公募研究A01】MAXタンパク質の減数分裂抑制因子としての役割とその分子作用機序

ES細胞がMax遺伝子の欠失に伴って示す減数分裂様の変化が、生殖細胞で起こっている現象を忠実に模倣していることや生殖細胞における生理的な減数分裂過程においてMax遺伝子の発現が一過性に低下することなどを明らかにしてきた。かつ、精子幹細胞においても、Max遺伝子の発現レベルのノックダウンにより減数分裂が惹起されることを明らかにしてきた。そして、平成28年度からは、今までの培養細胞を用いて得られた結果をもとに、マウス個体におけるMAXタンパク質の生殖細胞における減数分裂の時期のコントロール、及び内部細胞塊細胞における異所性の減数分裂に対する抑制因子としての役割について解析する。

石黒 啓一郎
熊本大学発生医学研究所 独立准教授 

【公募研究A01】減数分裂型cell cycleによる生殖細胞エピゲノム制御機構 

減数分裂型の細胞周期制御は、この時期に特化した染色体構造の構築と密接にリンクしていると考えられる。本研究では、減数分裂仕様に特殊化した細胞周期調節と染色体・エピゲノム構造の制御との相互関係を明らかにすることを目的とする。具体的には、(1)体細胞型から減数分裂型細胞周期への切替えの制御とエピゲノム構造変換との相互関係、(2) 減数分裂型細胞周期の制御によるmeiotic prophaseのエピゲノム構造変換、2つの角度から生殖細胞のエピゲノム制御について検討する。

関 由行
関西学院大学理工学部・生命科学科 准教授

【公募研究A01】始原生殖細胞によるエピゲノムリプログラミングとその人為的制御

生殖細胞の起源である始原生殖細胞では、大規模なエピゲノム再編成(エピゲノムリプログラミング)が誘導される。これまでにエピゲノムリプログラミングを制御する分子基盤の一端を人為的に再構築することで、核移植胚で異常を示す遺伝子群の初期化を誘導できることを明らかにした。本研究では、これまでの知見をもとに、始原生殖細胞による生理的リプログラミング原理に基づいた新規細胞リプログラミング法の開発を目指す。

品川 敏恵
理化学研究所石井分子遺伝学研究室 専任研究員

【公募研究A01】生殖細胞のヒストン置換に関わる因子の同定および機能解析

精子形成の過程で、DNAを巻き付けていたヒストンは、段階的にヒストンバリアント、TNPを経てプロタミンに置換される。このエピゲノム変化は、ほぼゲノム全体にわたって起きる大規模なもので、機能的精子の形成に重要である。本研究では、ヒストン置換の最初のステップであるヒストンH2A/H2BからヒストンバリアントTH2A/TH2Bへの置換に焦点を当て、どのような因子によってヒストンが置換されるのか明らかにする。

阿部 訓也
理化学研究所バイオリソースセンター チームリーダー

【公募研究A01】発生転換点におけるエピゲノム機能制御とヒト-マウス比較エピゲノミクス

これまでに、初期胚に存在する多能性細胞から、始原生殖細胞 (PGC)、配偶子へと至る一連の細胞系譜において劇的に遺伝子発現・エピゲノムが変動する 「変曲点」の探索を行ってきた。本研究では、これらの変曲点における時空間的エピゲノムダイナミクスとその意義を追求することを目的とし、1)着床前後のマウス胚およびそのモデルとしてのnaïve-primed幹細胞の転換系における遺伝子発現変動と、エピゲノムデータを統合し、胚発生の基盤となる 「青写真」としての エピゲノム形成への理解を深める、2)ヒト胚より PGC を単離し、 マウスの知見と比較解析することにより、哺乳類生殖細胞に共通のエピゲノム基盤の探索を行う、 などの研究を計画している。

青木 不学
東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授

【公募研究A02】受精前の卵子は最終分化した細胞なのか:全能性獲得の準備段階としての卵子

受精前の卵は分化した細胞であるが、受精後の1細胞期胚は全能性を獲得し、あらゆる種類の細胞へと分化できる能力を有するようになる。この受精前後における分化・全能性の変化を調節する機構には、クロマチン構造のダイナミックな変化によるゲノムのリプログラミングが関与していると考えられているが、その調節機構についてはこれまでほとんど明らかにされていない。本研究では、受精前後に変化するエピジェネティック因子および遺伝子発現に着目して、リプログラミング機構の解明を目指す。

山口 新平
大阪大学生命機能研究科 助教

【公募研究A02】始原生殖細胞特異的なヘテロクロマチン動態の解析

生殖細胞は次の世代へと遺伝情報を受け継ぐ唯一の細胞であり、その発生過程ではダイナミックなエピジェネティック状態の変化が生じる。申請者は、始原生殖細胞のペリセントロメアヘテロクロマチン領域に5-メチル化シトシンの酸化産物である5-ヒドロキシメチル化シトシンが特異的に生じることを見出した。この現象および、その責任因子であるTetタンパク質に着目して研究を展開することで、生殖細胞の発生におけるエピジェネティック制御機構の一端を明らかにする。

宮本 圭
近畿大学生物理工学部 講師

【公募研究A02】体細胞核の全能性獲得に関わる分子機構

除核した卵子に体細胞核を移植した場合、体細胞核が卵子内因子の働きによって初期化(リプログラム)され、核移植胚が発生を開始する。核移植胚の発生効率を上昇させる手法の開発は進む一方で、体細胞核が全能性を獲得する分子的背景は多くが謎に包まれており、初期化効率の向上や全能性の包括的理解のためにもその解明の意義は大きい。本研究では、核移植胚の発生効率が改善する条件下で発現上昇する遺伝子群に着目し、体細胞核の全能性獲得に関与する遺伝子とその作用機序を明らかにする。

北島 智也
理化学研究所多細胞システム形成研究センター チームリーダー

【公募研究A02】卵母細胞の巨大な細胞サイズの意義

雌性生殖細胞である卵母細胞は、多くの生物種において巨大な細胞質を持つ。巨大な細胞質は、受精後の胚発生のための物質を大量に積み込むためであると考えられている。しかし、受精前のイベントには重要ではないのか、どの胚発生イベントにどのように重要なのかは明らかではない。本研究では、卵母細胞の減数分裂と受精後の胚発生において、巨大な細胞質が担う役割とそのトレードオフを明らかにしたい。

原田 哲仁
九州大学生体防御医学研究所 助教

【公募研究A03】生殖細胞におけるヒストンバリアントによるゲノムマーキング機構の解明

個体が、遺伝形質を次世代に伝える基盤となるのは、生殖細胞におけるゲノムDNAに加えて、残存するヒストンが関与することが示唆されてきた。しかしながら、残存ヒストンが、次世代への形質継承のために、受精後に重要な遺伝子や領域をマーキングしているかについては、未だ解明されていない。これまでに、生殖細胞におけるクロマチン構造は、ヒストン修飾や修飾酵素のエピゲノム情報が明らかにされてきた。近年の解析により、生殖細胞特異的なヒストンバリアントの同定が進み、精子中のヒストンバリアントの解析が注目されている。本研究では、私たちが同定した未知ヒストンバリアントを含めたヒストンバリアントによる次世代への形質継承のためのゲノムマーキング機構について解析を行う。

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京都大学 大学院医学研究科 教授

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〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1

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