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篠原班員の論文がGenes Devに掲載されました

2013.10.01

篠原隆司先生のグループは、精原幹細胞の長期培養法を確立することで、分子生物学的・生化学的に、精子幹細胞研究を展開しておられます。精原幹細胞は精子形成能を有する一方、体細胞への発生能力が抑制されており、この機構を調べることは生殖細胞の多能性制御機構を明らかにする上で重要です。

これまでに篠原先生のグループは精原幹細胞の培養細胞であるGS細胞(Germline Stem Cell)を確立し、これが精子形成能を持つ一方で奇形腫を作る、すなわち体細胞への分化能力を有する細胞(multipotent GS(mGS)細胞)も生じることを報告されていました。mGS細胞への変換はp53の欠損によって促進されること (Kanatsu-Shinohara et al. Cell 2004)から、GS細胞は多能性を持たないよう積極的に制御されることが示唆されていました。

今回の論文では、mGS細胞はGS細胞に比べてゲノム全体のDNAメチル化が低メチル化状態であることを見いだしたのがきっかけとなっています。次に、GS細胞において、維持メチル化酵素Dnmt1のノックダウン(実際にはp53とのダブルノックダウンによってアポトーシスを回避するという工夫を加えている)によって、GS細胞からmGS細胞が高効率で誘導されることを発見しました。mGS細胞はES細胞と同様に低メチル化状態であることや、生殖細胞の腫瘍化に関わる因子の多くが、ES細胞の未分化性制御因子であるという共通性から、生殖細胞ガンの形成に関わる遺伝子に着目し、GS細胞の未分化状態を制御する新たな因子としてDmrt1を同定しました。Dmrt1をノックダウンすると、mGS細胞形成を促進することから、Dmrt1はGS細胞の多能性を負に制御することが明らかになりました。Dmrt1は、これまで性決定に関与することが報告されており(Raymond et al. Genes Dev. 2000)、今後、性分化機構と多能性制御機構の関わり合いも興味深いところです。また、Dmrt1やp53因子が直接制御する因子の同定も期待されます。更に、Dmrt1の下流にはSox2、Oct4が存在することを過剰発現、及びノックダウンの実験系で証明し、精原幹細胞の多能性制御ネットワークのモデルを提唱した意義深いストーリーとなっています。今回の論文も小倉淳郎先生との領域内共同研究によるものです。

私がこの論文を読んでいて最も感銘を受けたのは、Resultsセクションの始まりから、Dmrt1の同定へとつながるところです。そこでは、過去のES細胞の知見、生殖細胞ガンに関与する遺伝子群の報告から、わずか14遺伝子に多能性制御候補を論理的に絞り込んでいく過程が書かれています。網羅的にmGS細胞とGS細胞の発現プロファイルの違いから解析していくことも一つの研究戦略ですが、このような過去の研究の歴史を踏まえて、もっとも最短距離でDmrt1を同定したところは論文を読んでいて実に清々しいところです。
  (齋藤)

(Genes Dev. 2013 Sep 15 ;27(18):1949-58.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24029916

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