篠原班員の論文がStem Cell Reportsに掲載されました
2015.02.16
今回、本領域代表者の篠原隆司先生のグループは、GDNFとFGF2が異なるメカニズムでマウスの精子幹細胞(Spermatogonial Stem Cell)の自己複製に機能することを明らかにしました。計画研究代表者の小倉淳郎先生との共同研究の成果です。
篠原先生のグループは、2003年に世界で初めて精子幹細胞を試験管内で長期培養することに成功し、GS細胞(Germline Stem Cell)と名付けたことで有名です。GDNFは、in vivoとin vitroの実験から、精子幹細胞の自己複製に必須であると考えられてきました。しかし、今回の論文では、実はGDNFは精子幹細胞の自己複製には必須でなかったということを明らかにされています。また、これまであまり研究されていなかったFGF2に着目し、GDNFとの違いについても解析しています。FGF2には、GDNFを同じように増殖を促進する作用があることが知られていますが、今回の論文で少なくとも次の5つの点で異なることが示されました。(1)FGF2はGDNFよりもMAPK1/3のリン酸化を促進すること、(2)FGF2で培養した場合には扁平なコロニーを形成すること(GDNFで培養した場合には、凝集したコロニーを形成する)、(3)FGF2はGDNFと違い、ポリLリジン上で培養した時に生じるアポトーシスを抑制できないこと、(4)FGF2はGDNFと違い、MAP2K1/2を阻害することで抑制できないこと、(5)FGF2で培養した精子幹細胞の方がGDNFで培養した精子幹細胞よりも幹細胞活性が低いこと。以前から、精子幹細胞とその培養細胞であるGS細胞がヘテロな集団であることは分かっていましたが、今回のお仕事で、精子幹細胞は少なくとも2種類の方法で自己複製していることが実験的に証明されました。今後、この結果を足掛かりに、生体内における精子幹細胞の自己複製機構の詳細が明らかになることが期待できます。
(中村肇伸)
(Stem Cell Reports. 2015 Mar 10;4(3):489-502.)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25684228