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奥田班員の論文が Nature Communicationsに掲載されました

2016.03.31

埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 奥田晶彦先生のグループの論文が Nature Communications誌に掲載されました。

精子は、自己複製能をもつ精子幹細胞から、減数分裂を経て形成されます。奥田先生らのグループは、今回、本新学術領域のミッションと密接に関連する話題として、幹細胞の体細胞性分裂から生殖細胞形成の為の減数分裂へのスイッチ過程が、Maxタンパク質により制御されていることを見いだされました。

 生殖細胞が体細胞分裂から減数分裂へと細胞分裂の様式を切り替える機構については、そこにレチノイン酸が関係しているであろうこと以外はほとんどわかっていません。なお、東北大学加齢医学研究所の松居靖久教授らは、ES細胞におけるMax遺伝子の発現のノックダウンは生殖細胞関連遺伝子の発現を誘導することを示されました(Nat Commun 4, 1754, 2013:奥田先生も共著者の一人)が、奥田先生らは、その際に発現が誘導される生殖関連遺伝子のほとんどが減数分裂に関連する遺伝子であったことから、Max転写因子は生殖細胞分化の中でも減数分裂に特化した調節因子として機能しているのではないかと考えられました。その仮説を検証する為、奥田先生らは、まず、Maxホモ欠失ES細胞に対して、減数分裂過程で見られる特徴的な染色体構造であるシナプトネマ複合体の構成因子の一つであるSycp3タンパク質に対する抗体を用いた免疫染色を行われました。その結果、同細胞がシナプトネマ複合体様の染色像を呈することを示めされました。また、そのシナプトネマ複合体様の構造はPGCの誘導・維持過程に重要なBlimp1遺伝子をノックアウトしても得られたことなどから、同現象は、PGCへの分化をスキップした形で起こっているだろうと考えられました。

 同現象の分子メカニズムに迫るために、Myc遺伝子ファミリーの他メンバーのノックダウンを試みたところ、atypicalなPRC1 complex (PRC1.6)の構成因子であるMgaとMax遺伝子のノックダウンのみが減数分裂様変化を誘導し、またChIP解析の結果、Maxタンパク質が減数分裂関連遺伝子近傍に集積したことなどから、Maxを含むPRC1.6複合体の機能の低下が減数分裂へのエントリーの引き金(の少なくとも一部)となっていることを証明されました。

 さらに、雌雄生殖細胞の生理的な減数分裂過程においても、両生殖細胞の形成過程でMax因子の発現低下と減数分裂との共役が観察されたことや、精子幹細胞におけるMaxの強制的な発現低下によっても、Stra8遺伝子の発現上昇やシナプトネマ複合体様の構造が見られたことなどから、ES細胞を用いて得られたMax遺伝子発現低下に伴って見られた減数分裂様の現象は、生殖細胞における現象を忠実に反映しているであろうことが示唆されました。

 これらの知見は、生殖細胞の体細胞分裂からの減数分裂への切り替えのメカニズムについての理解を飛躍的に高める可能性があります。また、本研究からの結果の中で驚くべき点の一つは、減数分裂様変化が、精子幹細胞のみならず、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞でも観察されたことです。従って、このことは、極めて早い時期に発生が破綻(流産)してしまうケースの中には、着床前の発生初期の胚において異所性に減数分裂が誘導されてしまっているケースがあるといった、今までには全く想定されていなかったことが不妊症の原因の一部であるという可能性も示唆しています。従って、本研究は、Maxタンパク質の生殖細胞における減数分裂のタイミングをコントロールする因子としての役割とES細胞などの非生殖細胞における異所性の減数分裂を抑制する因子としての役割という2点において今後の展開が大変楽しみな研究テーマであります。
  (谷本啓司)

(Nat Commun. 2016 Mar 30;7:11056. )
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27025988

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