ピックアップ
Pick-up Topics

ホーム > ピックアップ > 相賀班員の論文が Nature Communicationsに掲載されました

相賀班員の論文が Nature Communicationsに掲載されました

2016.04.19

国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 相賀裕美子先生のグループの論文が Nature Communications誌に掲載されました。

 相賀裕美子先生は、哺乳類でNanos2が雄性生殖細胞分化に必須であることを世界に先駆けて報告するなど、この分野において先駆的な研究を数多く報告されておられます。生殖細胞は、胎生中期において雌では減数分裂が始まるのに対して、雄では細胞が静止状態に入るのみで減数分裂は起こさないといった顕著な性差が現れますが、相賀先生らは、以前、Nanos2遺伝子のノックアウト(KO)マウスでは、雄でもこの時期に減数分裂を開始することを発表されました。NANOS2はRNA結合型タンパク質であり、減数分裂に関係するRNAの分解に寄与するものの、これまで、NANOS2が雄性因子として機能発揮する上で、特に、どのようなRNAに結合することが重要であるかはよくわかっていませんでした。しかし、この度のNature Communications論文で、Dazl がNANOS2が機能発揮する上での極めて重要な標的RNAであることを証明されました。
 まず相賀先生らは、NANOS2と結合し、かつNANOS2の雄での発現抑制と雌での過剰発現により、それぞれ、発現量が上昇及び低下するという3つの基準を設定し、それら全ての基準を満たす遺伝子の一つとしてDazlを同定されました。そして、DazLの3'-UTRを条件的に欠損できるBACトランスジェニックマウスを作成しそのDazl mRNAの3'UTR-KOマウスを作成されました。すると、トランスジーン由来のDazl-mRNAはNANOS2が結合できない為に安定化し、過剰量のDAZLタンパク質が合成され、その結果、Nanos2 KOマウスと同様に、胎児期の雄性生殖細胞で本来抑制されているはずの減数分裂の誘導が見られることを観察されました。すなわち、これらの研究結果は、NANOS2はDazlの3'UTRを介してその発現を抑制し、減数分裂を抑えていることを示唆しています。なお、興味深いことには、この誘導された減数分裂はレチノイン酸(RA)合成の盛んな中腎近傍に限局していたため、DazlはRA依存的な減数分裂の応答性を生殖細胞に与えていることも示唆されました。
 相賀先生らはさらに過剰量のDAZLによりNANOS2欠失型の表現型が生じるのは、NANOS2とDAZLの間ではタンパク質レベルでも競合が見られるのではないかと考えられました。実際、論文では、NANOS2とDAZLの標的RNAの比較から、その両者においてかなり顕著な重複が見られること、かつ、様々な実験から、それら2つのタンパク質が共通の標的RNAに対し、拮抗的に作用することが証明されています。
 上記にあるように、相賀先生らは、NANOS2が雄性分化因子として機能する上での主な役割の一つがDazlの機能の抑制であり、NANOS2はその機能発揮の為、DazlのRNAとタンパク質の両方に作用していることを見事に証明されました。なお、その証明は、ここには書ききれなかった様々な緻密な実験によってなされたものであり、読んでいて大変感動いたしました。また、本論文で発表された研究結果は、ヒトの発生にも当てはまることは間違いないと考えられますので、未来の生殖・再生医療の発展にも大いに寄与する研究成果であると思います。
  (奥田晶彦)

(Nat Commun. 2016 Apr 13;7:11272. )
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27072294

情報交換サイト Information Exchange Website

Contact|お問い合わせ

領域代表者:篠原 隆司

京都大学 大学院医学研究科 教授

〒606-8501 京都市左京区吉田近衛町

領域事務担当:伊川 正人

大阪大学 微生物病研究所 教授

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3-1

一般的なお問い合わせは上記アドレスまでお願いします。

TOP