関班員の論文がStem Cell Reportsに掲載されました
2016.11.22
公募班の若手ホープの一角を担う関西学院大学の関由行さんの論文がStem Cell Reportsに掲載されました。先日の班会議で発表された内容も含み、すでに、ネット等でも話題になっているようですので、蛇足になる部分も有りますが、概説させていただきます。
関さんは以前からPRDM14という転写調節因子に着目した研究を進めていましたが、今回の成果は培養系でES細胞から分化したエピブラスト様細胞(EpiLC)にPRDM14を強制発現すると先祖返りしてES様細胞に戻るという話です。初め、PRDM14はPGCに発現する重要な遺伝子なのに何故生殖細胞にならないでES細胞にもどるの??とクエスチョンマークが先に現れて、ということは今回の発表もちゃんと理解していなかったようです。再度要旨を読みなおしましたが、その謎はとけませんで、やはり論文をちゃんと読まないとだめです。その鍵は、培養条件にあるということがわかりました。培養系でPGCを誘導するには、細胞塊を作らせることが重要であり、その際にPRDM14を強制発現するとPGCLCになる。ところが細胞塊の作製を抑制して接着培養にするとPRDM14の強制発現によってES様細胞になる。そしてPRDM14の本来の機能は未分化性遺伝子の発現の誘導であり、生殖細胞関連遺伝子は誘導されないということがわかったのです。生殖班の我々にとっては、では、細胞塊になることによって誘導されるPGC因子は何なの?という疑問がでてくるのですが、その回答も論文に書いてありました。そこだけ私も記憶があったのですが、接着培養ではBlimp1遺伝子が誘導されない。そしてその原因はT遺伝子ではないか?さらにTの上流のWnt系かというところまでちゃんと記載してありました。ということで私の疑問は解けたので本論です。さてPRDM14によって何故未分化性遺伝子が誘導されるのか?その回答はPRDM14によって最も初期に誘導される遺伝子Klf2だということです。彼らはKlf2をKOした細胞ではPRDM14による未分化遺伝子の誘導がおこらず、ES細胞への先祖返りも起こらないということを示したのです。この際、PRDM14はEpiLC でも発現しているOct4をKlf2のエンハンサーにリクルートすること、またKLF2はPRDM14と結合して、未分化性遺伝子を制御していることも免疫沈降によって示しています。一方、関さんたちはすでに以前PRDM14はTET-BER系による遺伝子の脱メチル化を促進することにより機能することを示していましたが、今回のKlf2のエンハンサーへのOct4のリクルートメントはTET-BER系を阻害すると起こらず、未分化性遺伝子の上昇やESLC分化も抑制されることから、やはりPRDM14によるactiveな脱メチル化が関与することを結論づけています。
今回PRDM14が未分化遺伝子の誘導に必須であることが示され、Oct4とPRDM14があると細胞のiPS化は可能そうに見えるし、そこにBlimp1が加わるとPGCLCが簡単に誘導できそうな気もしますが、どうなのでしょう?とにかく、細胞の未分化性を制御するこの因子は今後もいろいろな場面で活躍しそうです。今後の発展を期待しています。
(相賀裕美子)
(Stem Cell Reports.2016 Dec 13;7(6):1072-1086. )
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27866876