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伊川班の論文がPNASに掲載されました

2017.07.04

 またまた、伊川グループからのPNAS論文が発表されました。これは、中国・アメリカの2つのグループとの国際共同研究の成果になります。
 皆さんご存知のように伊川グループは、精子形成に関与する遺伝子の完全理解を目指して、多くの遺伝子の機能解析を行っています。今回の論文はその中の一つでTCTE1という、進化的に保存された軸糸構成タンパク質の機能解析になります。このノックアウトマウスの精子は、見た目には全く正常に見えるにもかかわらず、個体は不妊になる。何がおかしいのか?ここから伊川研ならではのマニアックな解析とその強さが発揮されます。精子の動きを精子アナライザーで詳細に観察すると、その動きに明らかな異常が発見された。精子の鞭毛のしなりがスムーズではなく、いわゆるヒトでは精子無力症として報告されるような症状であった。ここからまた、その原因究明の旅が始まる。このタンパク質は、9+2構造の軸糸の外側のダブレットをつなぐネキシンーダイニン複合体とよばれる構造に局在し、TCTE1はこれらのタンパク質と直接相互作用することから微細構造に違いがあるに違いないと思い電子顕微鏡で観察、しかし何も違いが見いだせない。そこで全てのタンパク質を解析することになる、MAS解析をすると多くのタンパク質に違いがある。しかし原因は何か?その蛋白質の中身をよくみてみると解糖系を含むcatabolic 経路の酵素がエンリッチしていることに気づく。精子の鞭毛運動にはダイニンモーターを動かして、微小管をスライドさせる必要がある。そしてそのためには解糖系が生み出すATPが必須であることから、彼らは、解糖系酵素の低下がTCTE1-nullマウスの精子の運動性の低下を引き起こしているのではないかと考え、解糖系の鍵酵素をいくつか調べた。その結果、3つの解糖系の鍵となる酵素の発現低下と、実際に合成されるATPの低下を見出した。すばらしい。
 遺伝子ノックアウト自体は簡単にできる世の中になりましたが、その解析はまだ、地道にやるしかない。しかし、もう精子に異常がでたら伊川グループに任せたほうが早いですね。これからますます共同研究が重要になると思います。我々の新学術領域研究は今年度で終了になりますが、これまでに築いたネットワークを今後も活用いたしましょう。

(相賀 裕美子)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28630322

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